musuhi のおいたち
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musuhiはバッグのブランドとして私の中に産まれました。
着るものとしての役目を終了してしまった美しい着物や帯を
新しい形にして生かしたいという単純な思いでした。
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デザインを進め、パターンを作り、
後は裁断をしてサンプル作りというところまで進みましたが、
そこから私の仕事は止まってしまいました。
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思っていた以上に頑丈な手縫の着物を解く時、
和裁で家計を支えてた祖母の丸まった背中を思い出し、
ハサミを入れようとする時、
絹地に仏画を描く祖父のまっすぐで真剣な眼差しが脳裏に浮かびます。
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毎朝決心してハサミを持ち、ハサミを置き、
翌朝またハサミを持ちを繰り返しました。
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長い間アパレル界にいた私にとって、
生地にハサミを入れる事は “慣れている事” のはずでした。
その “慣れている事” が出来なかったのです。
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着物、帯は見ているだけでその世界感に引き込まれ、
まるで玉手箱を開けたかのように私の想像力を掻き立て、
時空を超えて作り手の感性の豊かさやこだわり、
緊張感までを感じさせる不思議な物でした。
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その感覚は祖父の描いた仏画を見ている時と似ていました。
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ハサミを入れられなかった理由、
それは私が着物や帯を衣服とか生地ではなく
完成された一つの芸術品として見ていたからでした。
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“着物を着るということは芸術を身にまとうということなのか。。。”
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ふとそんな風に考えた時、
“この作品にハサミを入れ別の形にする前に
せめて着物や帯のことをきちんと知ろう”と思ったのです。
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この完璧な美しさの裏に隠された自然の恵みや先人の知恵、
想像をはるかに超えるの職人さん達の技と仕事量、
それに費やされた時間、、、
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それら全てにささやかでも敬意を払いたいと思い
そこから様々な事を学び始めました。
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その時の私にすぐ出来る事はただ ”知る” 事だけでした。
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結果、ハサミを入れられなかった事が私を物創りの原点へ戻し、
着物の世界に引き込んでくれました。
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そしてバックをデザインするだけでなく、
その素晴らしさを世界中の人に紹介し体験して頂く
現在のmusuhiへと繋がっていったのです。